サッカーで考える『アイドルマスターシンデレラガールズ セカンドシーズン』―“プロデューサー=監督”論―

先週はやきうのお兄さんでしたが、今週は日本のエース本田(のアイコン使ってる人)として記事を認めております。日ハム大谷も真っ青の二刀流とは俺のことよ。ハバネロです。

相変わらずシンデレラガールズのアニメが素晴らしいですね。17話も結局泣いてしまいました。城ヶ崎姉妹とみりあ、それぞれの抱える悩みが解かれていくプロセスの美しいことといったら。あとちゃまPホントおめでとうございます。

と、各話の感想ならいくらでも書けるのですが、表題にもある通り今回のテーマはそれではありません。どうもセカンドシーズンの展開を見ていると、「サッカー界でよく見ることだらけじゃないか……」と思うことが多々あったので、日韓ワールドカップからのにわかサッカーファンではありますが、サッカー好きの視点からシンデレラガールズのアニメを分析してみようと思います。

<トップ交代からの現場の混乱、というサッカーではよくある話。>

先週も書いた通り、セカンドシーズンの物語は「美城常務がアイドル部門のトップに就任し、それに伴い業績不振アイドル部門に大鉈を振るう」というところが発端となっています。

これって、サッカーファンの皆さまには多分お馴染みの展開なのではないでしょうか?
チームの成績不振に伴い、監督だったりゼネラルマネージャー(GM)、スポーツディレクター(SD)、ガチで財政難の場合は会長までもが交代する……なんてことはプロサッカーの世界では日常茶飯事です。

とくに監督やGM、SDといった職は選手の起用、選手の獲得にまつわる交渉を担う、いわば現場責任者にあたります。これが交代する、ということはそれまでチャンスを与えられていた選手が干されたり、チームを出て行ったり、あるいは他チームからの引き抜きがあったりと、選手にも大きな影響を与えることが多々あります。

どうでしょう、この状況はまさにセカンドシーズンの状況と一致するのでは?
15話では楓さんを他部署から引き抜き(=他チームの看板選手の引き抜き)、加蓮と奈緒のCDデビュー保留(=将来有望な若手がチャンスを失う)がありました。
16話ではウサミンの番組レギュラーを剥奪(=チームを支えたベテランと契約を延長しない)、その他のバラエティ要員にも路線変更を迫る(=チームの戦術変更に伴う人員整理)という展開。
17話では、美嘉をギャル路線から大人路線に変更(=選手のポジションをコンバート)


ただ、現実のサッカーにおいてはこうした変化が功を奏する場合も多々あります。
例を挙げるならば、昨シーズンのプレミアリーグにおいては、シーズン途中にアドフォカート監督に交代したサンダーランドや、5バックの守備戦術に切り替えたレスター・シティといったチームが、"路線変更"によってトップリーグ残留を果たすことに成功しています。

しかし翻って、346プロの現状はどうでしょうか?
楓さんの引き抜きは本人に断られ、バラエティ組の路線変更はアイドルたちから不満の嵐。美嘉の大人路線での売り出しは効果があったようですが、本人は納得せず。
サッカーで言うならば、大物の移籍交渉に失敗し、戦術変更に選手たちからは非難轟々。
美嘉の例はさながら、本来フォワードなのにセンターハーフにコンバートされ、それでも献身的なプレーを見せたマンチェスターユナイテッドのエース、ウェイン・ルーニーの昨シーズンの姿と重なります。一定の業績=チャンピオンズリーグ出場権という「最低限の結果」を出しているところも実に去年のマンUっぽいですよね。でも植毛する美嘉は見たくないな……w
……話がそれました。
現状を鑑みるに美城常務主導の路線変更は成功しているとは言いがたい状況。さながら昨シーズン序盤に3バックやろうとしてグダグダだったマンUそのもの。つまり美城常務=ファン・ハール説!!

さて一方、「アイドルの個性を尊重する」という路線を貫く武内P率いるシンデレラプロジェクトは、業績としての成功は詳細に描かれていませんが、少なくともアイドルたちがのびのびと活動する場としては機能している様子です。
よくありますよね、中位~下位くらいの序列のチームが「魅力的なサッカー」で旋風を巻き起こすことって。パコ・ヘメス監督率いるラージョ・バジェカーノリーガ・エスパニョーラ)とか、プレミアだとブレンダン・ロジャース監督時代のスウォンジー・シティとか。
結果主義のサッカーか、スペクタクル重視のサッカーか、というのはサッカーファンにとっては永遠の命題であるわけですが、まさかアイドルでも同じことを思う日が来るとは思っても見ませんでしたぜ……

<組織主義と個人主義―監督論から見る武内Pと美城常務のプロデューサー論>

もうひとつその辺に絡んでくるキーワードとしては「戦術システム」「選手の個性」
ここでどうバランスを取っていくか、というのがサッカー監督の腕の見せどころとも言えます。

アイマス的に言えば「戦術システム」「アイドルとしてのイメージ」であり、「選手の個性」とはそのまま「アイドルの個性」に置き換えられます。
つまり、「やりたいサッカー=売り出したいイメージ」であり、このビジョンと今支配下にいる「選手=アイドルの特性」とのすり合わせが、美城常務と武内Pでは真逆のアプローチになっているんですよね。


前段で美城常務=ファン・ハールだと書きましたが、現在マンUを率いるルイス・ファン・ハール「戦術至上主義」の監督として知られています。自らの標榜する戦術を絶対のものとして、選手には試合の中でのポジショニングやプレーについて「約束事」を多く課すタイプです。
ファン・ハールは、記憶にあたらしいところでは14年W杯で5バックを導入してオランダ代表をベスト4に導くなど、名将として一定の評価を得ています。一方で、その戦術主義者としての面が、選手との軋轢を生むことも多々あり、過去にリバウドリケルメらとの確執があったことも知られています。

戦術というビジョンが選手にも受け入れられれば良いのですが、そうならなかった場合はチームとして機能しない、ということが起こりえます。事実、ファン・ハールに率いられた昨シーズン序盤のマンチェスターユナイテッドは、3バックの導入に手こずりスタートダッシュに失敗していました。別の例を挙げるならば、日本代表・長友佑都の所属チームであるインテル・ミラノは11-12シーズン、ジャンピエロ・ガスペリーニ監督下で3-4-3システムを導入しましたが結果を出せず監督解任の憂き目に合っています。しかし、ガスペリーニ監督は昨シーズン、ジェノアで同様の3-4-3システムを導入し久々の一桁順位を達成しています。
戦術至上主義な監督の場合は、選手層やチームカラーとの相性が重要ということはお分かりいただけたのではないでしょうか?
現状、美城常務の掲げる「346プロのブランドイメージ」という「戦術」は、346プロの抱えるアイドルという「選手層」にはマッチしていないということが言えると思います。

ルイ・ファン・ハール 鋼鉄のチューリップ

ルイ・ファン・ハール 鋼鉄のチューリップ


一方武内Pは、それぞれのアイドルの個性に応じた仕事を任せる「個性重視型」といえるでしょう。
6,7話での挫折を経て、8~11話で徐々に「アイドルと対話し、その個性を重視すること」に開眼していったファーストシーズンもそうでしたが、美城常務との対比もあってそのカラーはより強まったように思います。サッカー監督としては「コミュニケーションを重視するモチベーター型」と言えるでしょう。
選手の個性を見極め、その特性を最大限に引き出すようなチーム作りに特徴があるタイプです。「選手の個性の見極め」という点においては、マインツ時代の岡崎慎司センターフォワードとして覚醒させた現ボルシア・ドルトムント監督のトーマス・トゥヘル個性派をまとめあげる手腕では、レアル・マドリーやスペイン代表を率いたビセンテ・デル・ボスケが近いでしょうか。デル・ボスケジダンフィーゴロナウドといった攻撃的スター選手とマケレレやイエロといった守備力のある選手をうまく組み合わせて「銀河系軍団」レアル・マドリーの黄金時代を築きあげ、スペイン代表ではと2010年ワールドカップとEURO2012で優勝に導いています。

しかしながら、そうした個性重視のチームでは、逆に選手の個性が噛みあわなければ機能しないという問題もあります。
一番我々に身近な例はおそらく、2006年ワールドカップの時の日本代表でしょう。「個性重視監督」の代表とも言えるジーコに率いるチームは、中田英寿中村俊輔小野伸二稲本潤一による「黄金の中盤」を武器に意気揚々とドイツに乗り込みましたが、結果はグループリーグ敗退に終わりました。また、同大会ではブラジル代表も「カルテット・マジコ」と呼ばれる強力な攻撃陣を擁したものの、サッカー王国としては不本意なベスト8どまり。いずれのチームも、個性重視が過ぎた結果「個性が打ち消し合う」という皮肉な結果に終わっています。

ただ、今のところ武内Pは「期末での『シンデレラの舞踏会』成功」という結果に向けて比較的堅実路線を推し進め、アイドルたちとのコミュニケーションも順調で、さまざまな仕事で場数を踏むことでアイドルたちも着実に成長する……という良いサイクルをまわせているように思います。的確な補強と指導、選手の個性を生かしつつ堅実路線も取れる、見た感じ昨シーズンのチェルシー並に盤石です。武内Pジョゼ・モウリーニョ説。
でもモウリーニョみたいな舌戦や特定選手の冷遇はやめてほしいですね。やらないだろうけど。
……とまあ、このままいけばシンデレラプロジェクトおそらく主力選手の故障がなければ良いシーズンを過ごせるのではないかという見立てが出来るのですが、それを考えると、おそらく与えられるであろう島村さんやしぶりんといったエース格への試練がどういった状況をもたらすか、というのが恐ろしくもありますね……。主力の不調で失速したチームとか枚挙にいとまがないよ!こええ!でもそこを上手く埋めることが出来ればチームとしての完成度が高い証拠です。色んな意味で期待しましょう。


長々と書いてきましたが、こうした個性と戦術ビジョンのバランスというのは難しい話で、どちらが正解というのはありません。これまで例示してきたように、サッカーではシステム重視で結果を出している監督も、個性重視で結果を出している監督もいます。現在も様々な監督がそれぞれの方法論でチームを率いていますし、そうした部分のぶつかり合いというのが、僕にとってはサッカーを楽しむ醍醐味のひとつでもあります。
ただ、「346プロダクション」を一つのチームとして考えた場合、どちらのやり方が現状チームカラーに合致しているか……というのはまぁ、言うまでもないでしょうね。


<常務に逆転の手はあるか?>

さて、モウリーニョ武内Pvsファン・ハール美城常務というまるでプレミアリーグだぁ……(直喩)な状況になっているセカンドシーズン。
このままいけば武内P率いるシンデレラプロジェクトは盤石、というか今のところ美城常務にいいところなしというか、もう(降格しか)ないじゃん……という状況です。実際、トップ交代で戦術への適応に苦しみ、引き抜きに失敗し、選手は流出し……なんて状況はサッカーだったら1部リーグ残留も怪しいところです。常務はせっかく面白い立ち位置で「敵役」になってくれているのだから、もう少し武内Pを苦しめて欲しいと僕は思います。

さあ、ここでサッカー的に考えて美城常務が取れる策は何か?
それは「自分の掲げる戦術に適応する選手を獲得する」ことです。
戦術至上主義を掲げるならこれがおそらくいちばんの最適解。監督交代からの新たな選手獲得で一番うまくことが運ぶパターンがこれです。
昨シーズンまでナポリを率いたラファエル・ベニテスはスペイン式の攻撃サッカーを植え付けるべく、イグアインカジェホンといったリーガで活躍した選手を多く獲得し、チームは安定して上位争いに絡むようになっています。
また、既に例に出したルイス・ファン・ハールも現在、マンチェスター・ユナイテッドにオランダ代表時代の教え子であるメンフィス・デパイやダレイ・ブリントを移籍させています。
そう、「己のビジョンを理解し、実行できる選手」が戦術至上主義の監督には不可欠なのです。

つまり、「世界に発信できる346のブランドイメージ」を背負えるようなアイドルを、自身の手駒として出してくれば美城常務にも逆転の手はあると思います。

幸い、シンデレラガールズには常務の掲げるブランドイメージに合致するような恵まれたビジュアルとカリスマ性を併せ持ったアイドルが、まだ一瞬もアニメに出ることなく待機しています。しかも海外出身で、洋行帰り(死語)の常務とも面識があるとしてもおかしくない設定の持ち主が。

そう、ヘレンさん!!!!
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というわけで、私は常務の切り札としてヘレンさんが世界レベルの活躍をしてくれることを、世界レベルを標榜する本田(のアイコンを使ってる人)として強く望むものであります。

ここまで読んでいただいてありがとうございました。グラッツェ!!