「王道」を描くための周到な描写―『ガールズ&パンツァー』の面白さ。
パンツァー・フォー!ハバネロです。
『ラブライブ!』の興奮も冷めやらぬ今日このごろなのですが、実は週末こっそり『ガールズ&パンツァー』の一気見を敢行していました。
ちょうどバンダイチャンネルに11話と12話が来てたのと、放送当時体調崩しまくりで視聴がかなわなかったのもあって、「じゃあいつ見るか、今でしょ!」というノリで。
「ぜったい好きだと思うんだよね」という周囲の言葉の通り、完全に僕の好みど真ん中の作品でございました。
ということで、今回は『ガルパン』のここがよかった!というところを語って行きたいと思います。
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まず序盤で思ったのは、「戦車道」という特殊な設定を見ている側に納得させるやり方の巧さ。設定を如何にして受け手の側に「そういうもの」として理解させるか、というのは物語の導入におけるひとつのキーポイントです。
始まる前から「女子高生と戦車」というある種全く対極に位置するものをどう組み合わせるのか、というのは気になってたんですが、まさか「女子の嗜み」というところに持ってくるとは思ってませんでしたw
字面だけ見ると無茶苦茶言ってるようにしか見えないんですけど、第一話で学園艦の絵がどーん!って出てきて圧倒され、生徒会が流してたPVを見た瞬間「おっけー、わかった!」って思っちゃう謎の説得力がありました。
最初に「こまけえことはいいんだよ!そういう世界なんだから!」って宣言しちゃうことで、あとはもう話に集中できる態勢が整う訳です。
その話の核を成すのは、王道中の王道と言ってもいい展開。
戦車道の家元に生まれた主人公・西住みほが、仲間と絆を育てていく中で戦車道への情熱を取り戻していくこと、そしてみほの活躍により、弱小校である大洗女子が全国大会で快進撃を見せていくのがストーリーの二本柱。
競技が戦車道ということさえ除けば、スポコンもののテンプレートと言ってしまっていいでしょう。
その根幹にあるのが、一話からのキャラクターどうしの絆の積み重ねにあるというのが良いですね。プラウダ校との対戦時に、廃校を告げられて「もっとみんなと戦車道やってたいのに…‥」とみほがつぶやくシーンは、序盤戦車道を忌避していた頃からの変化を思うと、とても重みのあるものになったと思います。
そして終盤、勝利よりも仲間の無事を優先したために黒森峰を去り、一度は戦車道を離れたみほが、自らの行動を大洗の皆が認めてくれたことで、「わたしの戦車道を貫く」覚悟を見せる展開が何と言っても素晴らしい。
11話、仲間たちからの信頼を受けてうさぎさんチームを単身救援に向かうシーンは、涙なしに見ることは出来ませんでした。
あと、個性派揃いの弱小チームが戦略を駆使して勝ち上がるっていうのも、王道らしく燃える展開で好きです。
その中核を担うのはもちろんみほの才能なんですが、戦車道の家元という「強者の血統」を持ちながらも、競技の性質上、技術的才能ではなくて戦術的才能に依っているのが面白いですね。
様々な奇策と、人員と戦車の個性をフルに活用して強豪校の穴を突き、勝利していくみほの名指揮官っぷりは、本作の大きな見どころであると言えます。
戦車道の描き方も良かったですね。
ルールを単純明快に設定したことと、戦車の描写にものすごく気合がはいってたこともあって、全く未知の競技であることも気にせず試合シーンに手に汗握ることが出来ました。
この辺りも、いかにストレスなく設定を飲み込ませて見せたいものを見せるか、ということに注意が払われていると感じました。
「礼に始まり礼に終わる」という武道らしい味付けも見事で、それによって対戦校の間に絆が生まれていく描写が良いですね。とくにサンダース校との対戦時はそれがよく表れていたと思います。あと毎試合律儀に解説してくれるダージリンさんとかw
市街戦に始まり、森林戦、雪上戦、野戦……と毎試合状況を変えて飽きさせない見せ方をしていたのも良かったと思います。
複数の戦車によるチーム戦形式というのも面白くて、だからこそみほの指揮官としての才能が輝いて見える形になっているんですよね。
チーム戦形式というのはキャラクター描写でも大きな役割があったと思います。大洗のメンバーは「チームごとのカラー」が明確に決まっていたことで、キャラクター全員の名前は分からないまでもちゃんとキャラを立てることに成功していたと思います。
ここが設定周りに加えて凄く上手いと感じた所で、キャラクターが多いとどうしても顔と名前を一致させる作業が困難になるのですが、それぞれのチームごとの個性と、その中での役割をハッキリ描くことによりそれをクリアしているのです。
チーム単位での「カラー」と「目的」をちゃんと描写しつつも、あくまでそれぞれの深い部分の描写はメインを飾るみほたちアンコウさんチームに絞ることで、多人数の物語における散漫さを無くしているのも特筆すべき点かと思います。
また、ライバル校のキャラクターもきっちり描くのは2,3人にとどめているのも上手いですね。
そうした中で、まず主人公チームの結束を高めていき、最終的に「大洗女子」という一つの学校チームとしての絆=連帯感が出来上がっていく、という展開も素晴らしかったと思います。
プラウダ校戦の偵察シーンで二人仲良く歌いながら出かける秋山殿とエルヴィンだったりとか、最終話で麻子の遅刻欠席を全部帳消しにしてくれるそど子だったりとか、チームを離れた部分でのキャラの絡みが出来ていくのも見どころでした。また前述のとおり、みほと大洗の皆の間に絆が出来ていくことがこの作品の大きな感動ポイントなので、物語的にも重要な役割を担っていたと思います。
そして、キャラクター個々の魅力も素晴らしいんですよね。
ちなみに僕は秋山殿が大好きです。
戦車と西住殿が大好きすぎる所とか、あのボハボハした髪なでくりまわしたいとか、私服可愛いとか、もういいたいことは山ほどあるわけで。サンダース校に潜入して映像まで自分で編集しちゃったりとか何気にノリがいいのも好きです。
あとクールな外見の割に全然クールじゃなかった生徒会の広報の子とか、見た目ロリなのに策士っぷりがカッコイイ生徒会長とか、バレー部のキャプテンとか、いいキャラがたくさん揃ってましたね。
ライバルキャラクターだと毎回解説に出張ってくるダージリンさんと、サンダース校の隊長のさっぱりしたキャラクターが好きでした。
あと音楽も好きだなー。戦車シーンは一貫して軍歌っぽいマーチのメロディだったりとか、対戦する各校のキャラクターに合わせてBGMが選定されていたりとかにこだわりを感じますね。
プラウダ校戦ではいきなりロシア語で歌い出して、やたら発音うめえなあと思ってたら中の人がすみぺだったのには流石に吹きましたw
ロシア軍歌 カチューシャ(Катюша) プラウダ高校ver ‐ ニコニコ動画:GINZA |
カールスラント軍歌 Erika エーリカ ‐ ニコニコ動画:GINZA |
……ってことで、そろそろまとめにかかっておきますと、ガルパンの作品としての凄いところは、「視聴者のストレスを徹底して軽減する作りの上手さ」と「その上で何が描きたいか、という部分がしっかりしていること」、そして「個々の要素の魅力」だと思います。
お陰で見てる方はホントに細かいこと考えないで、全力で楽しむことが出来ました。
二期はあるのかどうかわかりませんが、今後の展開にも注目して行きたいと思います。
あと大洗行ってみたい。
さしあたってはとりあえずコミックス版買わなきゃな……
- 作者: 才谷屋龍一,ガールズ&パンツァー製作委員会,鈴木貴昭,グラフィニカ
- 出版社/メーカー: メディアファクトリー
- 発売日: 2012/09/21
- メディア: コミック
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