アニメ「アイドルマスター」四話に見る千早と春香ふたりの対比、あるいはゲームとアニメの類似構造。

アニマスがついにニコニコでも配信始まって喜ばしい今日この頃。ハバネロです。

近況報告としましては、お手伝いしてた同人誌が無事に入稿されましてほっとひと息ついている所であります。
たぶんその内告知が来ると思うので、それがあがったらこちらでも告知記事を上げたいと思います。
今回は割と頑張ったので、皆さん手にとってくれると嬉しいです。


さてさて、アニメも始まってしばらく経ち、PS3版の発売も決まって今波に乗っている感があるアイマスですが。
昨日は関東では股監督こと高村和宏作画監督を務めた五話が放送、こちら関西では先週関東で賛否両論を巻き起こした四話が放送されてました。

……四話、素晴らしいはるちは回だったじゃないですか。
無印アイマスで言う所の「低アイドルランク」な頃の千早の「歌しか見えてない」「まわりと距離を置きたがる」このめんどくさい感じ(褒めてます)、と春香の底なしのポジティブさに触れてなにか自分にないものを感じている描写が丁寧で素晴らしかったと思います。

THE IDOLM@STER MASTER ARTIST 2 -FIRST SEASON- 05 如月千早

THE IDOLM@STER MASTER ARTIST 2 -FIRST SEASON- 05 如月千早

「はるちは」、いわゆる春香と千早のカップリングというのはアイマス界隈ではひとつ定番になってまして、「歌」という共通のキーワードやふたりの正反対な性格などの要素もあって人気の組み合わせになっています。
アニメではいわゆるこの「定番の組み合わせ」を丁寧に描いていて、たとえば二話の「やよいおり」「ロリカルテット(やよい、伊織、亜美真美の四人をまとめてこう呼びます)」、三話の「ゆきまこ」「はるゆき」「十七歳トリオ(春香・真・雪歩の三人)」といった組み合わせが頻出しています。
いいですねスタッフさんよくわかってますね。

「硬」の千早と「柔」の春香、その対比。

さて、四話では「はるちは」コンビと「ひびたか」コンビによる料理番組での対決を主軸として、千早のストイックで頑固な一面を描写していたわけですが、個人的に上手いな、と思ったのは春香と千早、ふたりの「対比」です。

当初番組冒頭で歌う機会が与えられていたのがなくなったことで不機嫌になっているシーンだとか、その延長線上で司会にコメントを求められてまずい返答をしてしまうシーンからよく分かりますが、現時点での千早はめっちゃくちゃ頑固です。ガッチガチやぞ。
収録の休憩時間に抜け出してスタジオの外で歌いに行ってしまうくらい、清々しいほどに「歌うこと」しか見えていない状態です。
もちろん他人に対して心を開くことも十分にできて無い状態で、「一人暮らしをしている」という個人情報も一部の人しか知らない状態。

春香はどちらかといえば真逆で、もちろん歌うことも好きなんですがそれ以上に「アイドル」という仕事を愛している、という印象が強いです。
転んでも、うっかりパンツを撮影されかけても、凹まないしむしろ笑ってられる。
千早が「硬い」ならば春香は「柔らかい」。
真逆のメンタルを持ちあわせている二人なんですよね。

そこが一番良く現れているなあ、と思ったのはやっぱり料理対決のシーンでしょうか。
千早は料理が苦手なことでコンビを組む春香の足手まといになることを恥じている、というか重く捉えている節があるんですが、春香は「大丈夫だよ!」って笑い飛ばしちゃうんですよね。
肉じゃが作ってて、千早が醤油と間違えてソース渡しちゃっても、(直後の千早の「どうしよう」という台詞としまった、という表情が見もの)春香はサルサソースとチーズをぶち込んでなにやらメキシカンで美味しそうな代物に仕立てあげちゃうんですよ。

こういった細かいシーンを見ていると、千早は「失点や失敗は取り返しが付かない」と考えているように見えます。そして春香はその真逆で、「失敗しても転んでもまた立ち上がればいいや!」という超絶ポジティブシンキングの持ち主であることがよくわかってくるんですよね。
その春香の超絶ポジティブな心持ちが、千早に今までになかった影響をじわじわと与えていることが分かります。
もちろん、貴音の「料理とは愛です」というなんか大味だけどすごいように聞こえてしまう謎アドバイスとかもあるんですがw

その結果、一度目は敗れた食材を賭けてのビーチフラッグ対決で千早は勝利し、恥じらいながらも「とったゲロー!!」って叫ぶことが出来たわけです。
対決に臨むときのポニーテール結ぶシーンも印象的ですよね。
最初のビーチフラッグ対決ではやや消極的な印象を見せた千早ですが、春香の影響か、勝負への気合いを込めてポニーテールをぎゅっと結ぶ。
響が負けじとかました大ジャンプももちろん素晴らしかったんですが。*1
アイドルの「歌手」としての側面しか見ていなかった千早が、「アイドルのお仕事はなんでも一生懸命やるよ!」っていう春香の影響を徐々にではありますが如実に受けているということを示す良いシーンだったのではないかと。

そうやってほんの少し変わった千早ですが、まだ皆の輪の中に入っていくことは出来ないまま。
電車の中で音楽聞きながらうつろな目で車窓見るのやめて自分見てるみたいだからやめて!!
カロリーメイトとミネラルウォーターとかもうちょっと食生活に気を使ってお願いだから!(全然人のこと言えないんですが)
……というところでお話は幕。

千早の、はるちはの、そしてアイマスへの「導入」として

ここまで書いてきて、関東放映時に賛否両論になった訳がなんとなく分かったような。
なんとなく、みんなもうちょっと千早の内面を深く描写することを期待してたんじゃないでしょうか。
あるいはキマシタワー的なはるちは展開を期待してたとか。
馬鹿だなお前ら、まだこの段階でそんなの来るわけないじゃないか。

千早については第一話当初から「なんかこの子は違うぞ」というのを端々に見せるちょっと特殊な描き方をされていたこともあって、担当回に期待が高まってた感もあったと思うんですが、安心しろ今回はまだプロローグだ。
これからおそらく(たぶん山場は2クール目以降になると思いますが)千早の過去とか*2がどんどん出てくると思われるので、それに伴って春香やまわりのメンバーとの関係性もどんどん深くなっていく描写がされていくと思います。
1クール目は今のところ各回に各キャラクターの内面を丁寧に描写しつつ萌えアニメのお約束を挟んでいく構成で進んでいってるので、今のところは「これでいい」んですよ。
今回のお話で「千早がストイックに『歌うこと』を追いかけている不器用な女の子」ということはだいたい伝わったんじゃないかと思います。*3
なので、「如月千早の物語」「はるちはの物語」が描かれることを期待する人にとっては番組全体の後半が見どころになってくるんじゃないかな、と。


それはもちろん他のキャラクターについても同様なんですが、もっと言ってしまえばアニマス自体がそういう作りになっている気がします。
丁寧な作画と映像美によって、アイマスの最大の魅力の一つである「キャラクターのビジュアル」を十二分に見せながら、キャラクターの内面描写を少しずつ積み上げていく。おそらく物語のカタルシスが爆発する瞬間は後半になるでしょう。
……ここで勘のいい人は既に気づいたかもしれませんが、アニメ全体の構成をこうやって見てみると、ゲームからのファンからしてみれば「僕等がアイマスにハマったのと同じルートじゃねこれ!?」ってなると思うのですよ。

暴論めいたことを言ってしまえば、僕等が最初にアイマスにハマったきっかけって大抵「アイドルが可愛かったから」じゃなかったでしたっけ。
「シナリオの展開が良く出来てる」という評判を聞いてアイマスに……って人はあんまりいないんじゃないかな?
アイドルが可愛いって評判を聞いてゲームを始めてみたら、男嫌いだったり頑固だったりやる気ナッシングだったりと「この子らめんどくせえ……」ってなった人もいっぱいいたんじゃないでしょうか。
しかし月日を共にしてトップアイドルへの道を突き進んでいく中で、どうしようもない愛おしさを彼女たちに覚えている、そんなゲームだったように思います。

そう考えると、アニメもゲームもなぞっている部分は実に同じで、今、丁度アニメでは「アイドルたちのことがめんどくさい部分含めて色々見えてきた」あたりになりますね。

アニメ始まって以降、構成がどう考えても下手打ってるだの、インパクトで負けてるだの色々言われていますし、確かにそういう部分も無きにしもあらずなんですが、古参/新規それぞれのファンに対して「アイマスってこういうゲームだった!/アイマスってこういうゲームなんだ!」ということを思い出させて/理解させてくれるという点で見ると、非常に絶妙な構成で作られているように思えます。

願わくば、この「地味なれど実に良くできている」というアニメの良さが、新規ファンの獲得につながってくれるととてもとても嬉しいのですが。
秋発売のPS3版も売れてくれるといいですね。というかG4U欲しいんですがPS3買う金なんてねーよ畜生。

アイドルマスター2 (通常版)

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僕自身、すでに四年にわたってアイマスというコミュニティで繋がった人たちの中で、とても楽しくやらせてもらっているので、もっともっと色んな人と遊んでみたいんですよ!

ここまで長い文章書いてきてだいぶ疲れたので、来週は趣向を変えて股監督回の作画がいかほど素晴らしかったか、ということをキャプチャをふんだんに用いて熱くそしてフェティッシュに語っていきたいと思いますのでお楽しみに(嘘

TVアニメ「アイドルマスター」オープニング・テーマ「READY!!」《DVD付初回限定盤》

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*1:前述の貴音のアドバイスと合わせてみてみると、ひびたかコンビは既にアイドルとして覚悟完了している、ともとれますね。

*2:先述した、「失敗は取り返しが付かない」という千早の考えの根底にあるであろう「とある事件」についても描写がされると思いますが、今は伏せます。

*3:三話の雪歩も同様で、あの過剰なまでの演出で彼女が「男の人と犬が苦手」ってことは刻み込まれたと思われます