不器用にもがく青春のカタチ−竹宮ゆゆこ「ゴールデンタイム2 答えはYES」


花粉症がマッハで近所の本屋に行くのすら辛いです。ハバネロです。
ひとたび外に出ようもんなら花と目が大惨事。裸眼視力1,5が唯一にして最大の売りの自分、視力矯正とは縁がありませんが、この時期ばかりは外出するときに伊達メガネ無いと死にます。

さて、そんな死線をくぐり抜けて手に入れました「ゴールデンタイム2 答えはYES」ですが。

花粉症のダメージを省みず買いに行った甲斐はありました。
不器用にすれ違う感情を描くことは竹宮ゆゆこの真骨頂であると思うわけですが、そんなたけゆゆテイストが全開の一冊です。
やはり竹宮ゆゆこと言えば「とらドラ!」を代表作として語られることが多いと思うのですが、今作はとらドラのテイストはそのままに、よりスピード感のある展開になってるので、作者の持つエッセンスを味わいたいならベストチョイス。
メインとなる登場人物の立ち位置が「とらドラ!」に近いこともあり、とらドラ中盤〜後半のやきもきする展開が好きだった人には安心して勧められるかと。
その分やっぱりコメディ色は薄いというか、コメディシーンすらちょっと切なさを含んだテイストなので、やや全体的に湿っぽいというか曇り空加減なのは仕方ないかな、って感じではありますが。
しかしこの不器用な思いと葛藤がぐっちゃぐちゃにもつれてる感じがやっぱり癖になるのよね……


以下は読んだ人向けのお話。

上位互換というか、アップグレードというか。

さて、導入という意味合いが強かった1巻にくらべ、今回の2巻では一気に物語が動き出しつつあります。
ヤナっさんに振られた香子と、主人公である万里の関係性にも亀裂と変化が。
そして前回のラストで明かされた万里の過去と密接に関わってくるキーパーソンであるリンダ先輩の立ち位置とか、これから三巻に向かって怒涛の展開が予想される流れに。


特に、上手いな、と純粋に思ったのはリンダ先輩の在り方。
過去に万里と親密な関係にありながら、万里は事故によってその記憶を失っていて、そのまま先輩後輩として再会したわけですが、その関係を壊さないために、過去を「なかったこと」としてふるまっているわけですが。
その在り方は「とらドラ!」の櫛枝実乃梨とかぶってくるところがあります。
みのりんの場合は、関係性を壊さないために「前に進まない」ことを選択してた訳ですが、リンダ先輩の場合は逆で、関係を壊さないために「過去を見ないで前に進む」ことを選択している、という。


それを言い出すとメインヒロインである大河と香子の立ち位置も非常に良く似ていて、「不器用な自分の恋路を主人公に助けられているうちに、主人公に惹かれていく」というところは共通する部分です。お嬢様なのも一緒ですね。
とらドラの場合は大河がその思いを自覚するまでに結構巻数を重ねてるわけですが、今作では既に二巻でその状況にまで来てるので、今後もかなり早い展開+少ない巻数での完結が予想されるかと。
とらドラ!ももちろん僕は大好きだったんですが、長さがちょっと辛いかな?って思うことがちょいちょいあったので、そのへんは作者としても意識して、テイストはそのままに、より良いテンポで書こうとしてるような気がします。
登場人物の年齢層を引き上げてるのも、とらドラでついたファンをそのまま引っ張り上げる意図なのかな?とか。

不器用さと思い切りのアンバランスから逃げない、ということ。

とらドラ!」しかり、この「ゴールデンタイム」しかり、竹宮ゆゆこの持ち味というのは「青春の不器用さ、カッコ悪さをちゃんと描ける」ってことだよなー、と読んでて思ったりしました。
一方で、優柔不断に思い悩んでばかりだと読んでる側としてはキツイんですが、そこから感情のスイッチが振りきれて爆発するシーンがちゃんと機能してて、そこにかっちりクライマックスを嵌められるところ。
今回だと、飲み会でリンダ先輩に感情爆発させて、そのまま外へ飛び出して走りだす万里。
そこで香子が追っかけてきて、告白シーンに繋がるのはおおおっ、と思いました。


悩んで悩んで悩みまくって挙句の果てにうわーってなる瞬間ってやっぱり誰もが経験してることだと思うんですけど、思い出しても恥ずかしいし、小説の中のお話として見ててもなんだか小っ恥ずかしいんですよねw
あと、飲み会の途中でみんな盛り上がってるのに自分たちの周りだけ妙に盛り下がってるとか、なりたい自分と現実の自分のギャップに思い悩んだりとか、もうあるあるすぎて読んでて微妙にぐさぐさ突き刺さってくるんですけどもw

そういう小っ恥ずかしさとか居た堪れない感じ、ってちょっと見てるのキツイんですが、そこを逃げずにちゃんと描写してるからこそ、クライマックスの爆発がより冴え渡るんですよね。
そうやって、不器用にぐちゃぐちゃに絡まった思いを突き抜けてクライマックスへと至る瞬間が、読んでる側としてはまぎれもなく一番楽しいゴールデンタイム、なのかもしれません。


もちろんヒロインである香子の魅力、っていうのも凄いです。プライドを抱えながら不器用にもがく姿は、なんというかほっとけない感じで目が離せません。
振り回されても、それでも尚傷つきながら弱々しくとも立とうとする彼女を愛おしく思う気持ちは、主人公である万里を通してめちゃくちゃよく伝わって来ます。


でもやっぱり、この作品の魅力は青春独特の不器用な痛々しさを押し出すことで、クライマックスの盛り上がりをめちゃくちゃ上手く演出する物語としての妙味なんじゃないかなー、とかなんとか。少女漫画とかだと結構よくあるんですけど、ラノベでここまで上手くそれが出来るところがこの作品の価値を高めているという感じでしょうか。

続刊は夏ごろに発売ということなので、それまでwktkしながら待ちたいと思います。
マジで色々どうなるんでしょうか。