「蒼穹のファフナー HEAVEN AND EARTH」の物語としての魅力と、冲方丁のおはなし

コミケの盛り上がりに逆行するように帰省してきました。
ハバネロです。
べ、べつに寂しくなんかないんだからね!!


ということで、せっかく帰路に上映してる映画館があったので
「蒼穹のファフナー HEAVEN AND EARTH」を見てきました。
すごかったです。
カノンの乳揺れが。
うそです。
あ、乳揺れがすごかったのは本当ですが、本当にすごかったのそこじゃないw
あと一騎カレーの美味そうなこと。
いや、そりゃ二年もたてばカノンの乳も揺れるようになりますし、一騎も“楽園”でカレー作って、それが看板メニューになっちゃったりとかしますよ。

というわけで、TVシリーズの2年後を舞台にした「蒼穹のファフナー」の続編が劇場版で登場しました。


蒼穹作戦の成功によって人類とフェストゥムの間に平和が築かれて二年後。
数々の戦いをくぐりぬけた竜宮島も今は平穏無事そのもの。
しかしそんな平和はとある事件をきっかけとしてもろくも崩れ去り、再び戦いに巻き込まれてゆく竜宮島の人々。
島の人々は、人類とフェストゥムの関係は果たしてどうなる!?
というのが今回のストーリーです。


さて、そんな劇場版ですが、僕の印象をひとことで述べるならば、
「非常に贅沢なエピローグ」である……というところになるでしょうか?


テレビシリーズのラストで総士が一騎とのあいだに交わした約束。
あるいは、新しい段階に入った竜宮島、そして人類とフェストゥムの関係、その未来。
その行く末はぼくたちが最も見たかったモノ。
でも、ファフナーという物語としては、テレビシリーズで終わってても全然いい。
エピローグとして描写するとしても、克明に描かなくてはならない要素ではないかもしれない。
でも出来るなら見たい!そして妄想しちゃう! って言うのがファン心理ってもんですよね。


そういう「あってほしい物語のエピローグ」が、こちら側の想像を超えた密度と熱量を持って、目の前で展開されたのが今回の劇場版ではないかな、と。
加えて、テレビシリーズ本編の前日譚である「LIGHT OF LEFT」の時代から積み上げてきた要素が惜しげもなく投入された、本当に贅沢な一編に仕上がっています。
存在だけが語られてた〇〇〇〇とかでるんだぜ!!あと〇〇〇〇がでてくるんだぜ!!


ファフナーを愛してやまないぼくみたいなファンの人も、そうじゃない人も、ぜひテレビシリーズを「LIGHT OF LEFT」から時系列順に復習してから劇場へダッシュしましょう!!
せっかくのお正月休みなので、上映してる劇場が近くにないよ! ってひともちょっと遠出して見に行くにはチャンスです。
チケット代の分は確実にお釣りくるよ!もっとすると交通費も。

  • 物語としての「HEAVEN & EARTH」というか、ファフナーの魅力


さて、そんな贅沢なエピローグであり、それだけでも十分すぎるぐらい魅力的な「HEAVEN AND EARTH」ですが。
そもそも、「蒼穹のファフナー」の魅力ってなんでしょうか?

等身大の主人公が共感できる、女の子可愛い、おっさんとメカがカッコイイ、SF設定が設定厨には垂涎モノ、フェストゥムが訳わかんなくて怖いetc……
いっぱいありますね。
それに加えて、「物語としての面白さ」がやっぱりあると思います。


もっと言うならば、「ストーリーのテンションのアップダウンの巧さ」ではないかと。

ファフナーには暗い展開、絶望的な展開が多くあります。
一匹でも強すぎるフェストゥムがぞろぞろと島を襲ってくるとか仲間が倒れるとか日常茶飯ですからねw


でも、どれだけ絶望に叩き込まれても、積み上げてきた要素と伏線が大爆発してそれをひっくり返す展開の快感は最高に熱い!!
それをわかっててお話を作って、見てるぼくらのテンション管理をうまくやってるんだな、って感じがすごくします。
だから感情がゆさぶられて、心のそこから楽しめる。


そういうエンターテイメント性の高さに加えて、ファフナーの場合はテーマ性の高さもあります。


ファフナーが描いているのは「ここに在るとはどういうことなのか?」というありきたりだけどなかなか難しいテーマです。
「あなたはそこにいますか?」というフェストゥムの問いかけがテーマそのもの、と言えるでしょう。


しかし、見てるぼくらはそんな難しいことを常々考えて画面を見てるわけじゃなく。
むしろ熱い展開に乗せられているうちに、いつの間にかその答えを手に入れている、という感覚がないでしょうか?
頭で考えて理解している、というよりは、感覚的にわかる、そんなふうに。

哲学的な命題の答えを、考えさせるんじゃなくて、いつの間にか手に入れさせてしまう。


現代国語の授業で、「この物語の主題はなんでしょう?」って訊かれるたびにうんざりした経験は誰もが持ってると思います。
そんなこと考えなくていいから純粋に物語を楽しみたいんだけど……ってぼくはよく思いました。

なのに、考えなくても楽しんでいればいつの間にか答えは頭の中に確実に在る、というか、説教臭さがない、というか。


そういうエンターテイメント性とテーマ性の高さが相互に共存してる、っていうのが物語としてのファフナーの魅力なんじゃないかと思います。

そんな魅力的なファフナーの物語をつくるのが、冲方丁という作家です。
最近では天地明察本屋大賞をはじめ各文学賞フェストゥムよろしく蹂躙しまくりだったので、名前を聞いたことある、ってひとも少なからずいるでしょう。

このひとの書く物語は、なべてファフナー的。
つまりエンターテイメント性とテーマ性の高さがお互いじゃまにならないように共存しています。
ただし、どれも総じて長い話であることが多く、しかもテーマは結構重い。
さらにグロテスクな描写も結構頻発したり、人間の嫌な面も遠慮無く描写してきたりと、なかなか人に薦めるにはハードルが高かったり。


でも、ファフナーの物語を面白いと感じられるならばこの人の他の作品にも是非触れてほしいですね。
最近はもしかしたら手に入れるのが難しいかもしれませんが、ファフナーのノベライズも手掛けてたりします。

蒼穹のファフナー (電撃文庫)

蒼穹のファフナー (電撃文庫)

テレビシリーズとはちょっと違う話になってはいますが、エッセンスはそのまま。


冲方丁の物語のエッセンスを手早く味わいたい、ならば「微睡みのセフィロト」がオススメ。

微睡みのセフィロト (ハヤカワ文庫JA)

微睡みのセフィロト (ハヤカワ文庫JA)

超能力者と普通の人間が対立するようになってしまった世界で、水と油であるはずの普通の人間と超能力者が組んで事件の捜査にあたる、というハリウッド映画的なバディームービーの要素があったりで、とっつきやすいかも。
「マークエルフ」なんて単語が出てきたりするほか、超能力者と普通の人、そこにある埋め様のない差を埋めていくにはどうすればいいか?というテーマはファフナーにおける人類とフェストゥムの関係にも通じるものがあります。


どうせならかわいい女の子が出てくるのがいいな、って人にはシュピーゲルシリーズを。

近未来の都市を舞台にした戦闘美少女モノですが、テロリズムとの戦いという現代的なテーマに挑戦。
仲間との絆、巨大な敵との死闘、絶望からの失地回復のカタルシスと、熱い展開のオンパレードが続きます。
富士見ファンタジア文庫角川スニーカー文庫で、<オイレン><スプライト>ふたつのシリーズを同時展開したあと、現在完結編<テスタメント>が展開中。
ラストに向けて怒涛の展開が続いており、今後の展開はいっときも目を離せそうにありません。


グロテスクなのとかダークなのはちょっと……って人はやはりヒットを記録した天地明察

天地明察

天地明察

江戸時代、暦をつくるという一大プロジェクトに挑む男の半生の記録。
さながら江戸時代版の「プロジェクトX」を見ているよう。
多くの人々との関わりの中で、主人公に受け継がれる意志と夢がやがて大輪の花を咲かせる展開は非常に熱いです。


そんな熱く、響いてくる物語を量産する作家・冲方丁ですが、今度は雑誌「野性時代にて「光圀伝」を連載開始とのこと。
この人の書く水戸光圀、つまり黄門様がどうなるのかな?っていう興味は尽きません。


ということで、お正月はファフナーを見たあとで、冲方丁作品をおともにコタツで読書なんていかがでしょうか?