四年間の沈黙を破る新作、「涼宮ハルヒの驚愕」感想とか。

ストライクウィッチーズに夢中になってたおかげで発売日忘れるところでした。ハバネロです。

ということでハルヒシリーズ待望の新作、「驚愕」がいよいよ発売となりました。
「置いてるかな〜」と思って近所の書店にふらっと行ってみたら、初回限定版がものすごい平積みされててびっくり。
関東の方では深夜販売で並んでたりとちょっとしたお祭りになってたので、大丈夫かな、と思ってたんですが杞憂でしたw

参考→「涼宮ハルヒの驚愕」深夜販売@秋葉原の簡易レポート的なもの - 平和の温故知新@はてな

四年ぶりの新刊発売、ということもありますがライトノベルの発売日にちょっとした「お祭り」になるあたり、未だハルヒという作品のパワーを感じさせてくれますね。

以下ネタバレ含むので格納。



まず、中身としては「分裂」の続編にあたるので、分裂を読み返して話を思い出すところから始めることになりましたw
「分裂」でちりばめられていた伏線、謎の電話の相手とか新入団員の選抜とかは綺麗に回収されてて、続編としては非常にしっかり出来てるな、という印象。


分裂でもそうでしたが、新入団員選抜という「日常」のパートと、未来人・宇宙人・超能力者それぞれの対抗組織が現れておまけに長門が倒れる、という「非日常」のパートが完全に「並行」して進む、というのが今回の物語の文字通り二本柱になっています。

SOS団的な日常風景の裏にある「非日常」に対処していく、というのがハルヒの物語の基本構造な訳ですが、そういう普段のストーリーが「非日常を日常で覆い隠す」ものだとしたら、今回の物語は構造としては完全に別ルートで進んでてちょっと新鮮さがありました。
短編で描かれる日常的風景と、「消失」や「陰謀」がそうだったような緊迫感のあるシリアスな話が別ルート(平行世界、といってもいいかも)として進行する形、そして最終的に平行世界の自分と出会う展開は、昔読んだ神林長平の「敵は海賊海賊版」をちょっと思い出したりしました。

敵は海賊・海賊版 (ハヤカワ文庫 JA 178)

敵は海賊・海賊版 (ハヤカワ文庫 JA 178)

シリーズ全体に言えることかも知れませんが、こういうのみてると谷川先生はホントにSF好きなんだろうなー、と思ったりします。
(前から、僕は「ハルヒシリーズはSFの入門書として読むといい」と思ってるんですが、その話はまた今度やろうと思います)

加えて今回は佐々木さんがいるおかげで会話の哲学度というか、思弁的な度合いがぐっと上がっていたような……
しかし佐々木さんはいいキャラしてます。対男子限定のボクっ娘であるとかね。
是非今後のシリーズでもちょいちょい顔を出して欲しいと思いますw


ちょっと脱線しましたが、結局のところやっていることは今までのハルヒシリーズと同じです。
すなわち、日常の中にある非日常に触れながらも、最終的にキョンは(ハルヒも?)日常に回帰していく、といういつものお話。
「憂鬱」のラストでも「消失」でも、キョンの選択は「SOS団のあるSF(少し不思議)な日常へ戻って行く」ことでした。
雪山症候群」→「陰謀」→「分裂」でちょっとシリアス展開になるのかな?と思わせといて、結局対抗の図式は解体かよ!と肩透かしを食らった感もなきにしもあらずですが、これがハルヒの定番ならしゃーないか、という気がしないでもないです。時代劇的な様式美に近いのかも?

個人的予想としては、シリーズのラストは「ハルヒが神様的パワーを完全に失う」ところになると思うので、そういう意味でも「非日常から日常への回帰」はシリーズ通してのテーマ、と言えるのかも知れません。

あと、地味に色々と新事実が明らかになってるのもちょっとした見所。
「機関」における古泉の立ち位置だったり、国木田の秘密だったり、谷口がひと月ちょっとだけ付き合ってた彼女の正体だったり。
特に古泉の秘密(ほんとうなのかどうかはさておき)は、今後の長編でのネタになるのかな?とか。
消失で長門メインの話、陰謀でみくるメインの話をやってるので、次はそろそろ古泉にお鉢が回ってくるような気がするんですが。
「消失」「動揺」あたりから色々とそれらしい伏線がばらまかれていることもありますし……


全体としては、四年ぶりの新作長編にふさわしく「濃い」一冊でした。
特典小冊子の中身もそれなりに豪華でしたし(個人的に面白かったのは表紙デザイン案の変遷だったり)、読み応えある一冊に仕上がってると思います。
さて、次の新作は何年後になるのかしら(おい