僕達の心を刺激する動画。―【勝手にアニメPV】No logic【作ってみた】が死ぬほどヤバイ

好きな曲ですっごく好みなタイプの動画が上がるとテンション上がりすぎちゃうひとです。ハバネロです。

というわけで、僕が好きで好きでたまらないジミーサムPの、好きで好きでたまらない曲にめっちゃくちゃ好みのPVがつきました。

こちらが原曲。

Unplugged Stray

Unplugged Stray

素晴らしい曲に負けず劣らず、今回の動画めっちゃくちゃすごいです。
それじゃあ、なにがいったいすごいのだろうか?ということをちょっと考えてみたいと思います。

ボカロにおける「手描きPV」の文脈。

その前に少し、ニコニコ動画ボーカロイド界隈における「PV」の在り方についてひとつ、所感というか総括というか。
もともと、「歌を歌わせる」ことから出発したボーカロイド。そのため、「映像」に使えるような素材はほとんどありませんでした。
そもそも公式から与えられている情報が立ち絵と声くらいしかないですからね。
ニコニコ動画で広く流布しているボーカロイドたちのキャラクター設定*1も、もともとはファンによる二次創作で生まれたもの。
ビジュアル面が公式によって補完される、ましてや映像素材などは皆無だったわけで、初期は立ち絵一枚だとか、イラスト一枚だけで延々曲が流れる動画が大半を占めていました。


そんな中で、一枚絵から出発して「手描きPV」が生まれたのはいつ頃のことか、僕自身は詳しく知りません(ぉぃ
しかし、おなじく「ニコニコ御三家」であるアイドルマスターに比べると映像素材に関しては圧倒的に「弱い」立場だったわけで、動画のメインが二次創作による手描きのイラストを用いたものになるのはある種必然であったかも知れません。
このような「PV」は紙芝居形式のもの、FLASHを思わせる静止画MAD調のもの、あるいは手描きアニメなどなど種々雑多。
MMDの登場と発展により、「動く」動画素材がある程度整えられた今にあっても、なおボカロにおけるPVの主流を占めています。


もうひとつ、ボカロPVの特徴としては、新曲発表時にPVを曲に添えて発表する形態と、曲が発表された後にPVがつく形態に大きく二分されること。
今回の動画は後者に当たります。

リフレインと、それをぶち破る開放感。

さて、今回の動画ですが、いろいろ凄い。
まず四分越えの手描きアニメーション動画、という時点でその作業量考えるとやっぱり凄い。
文字の置き方や実写の使い方、曲を殺さない色調の使い方etc、初めて動画を作ったとは思えないほど。
イラストのセンスも非常に素晴らしいと思います。

荒削りな部分も無いとは言いませんが、ここまで「目で表情を語る」ことが出来てると、その魅力だけで他の欠点は帳消しにしちゃってもいいくらい。


でも、何が一番うまいかって言うと曲の持っている爽快感をきっちり映像として見せてくれているところ。
この「No Logic」という曲は、イントロからAメロは繰り返し同じフレーズが続き、Bメロでだんだん盛り上げてサビでズドーン!!って爆発する、という構成になってます。
動画内でもそれを意識したリフレインの使い方がめっちゃくちゃ上手いです。

こうやって同じイラストをちょっと変えて見せる。これは手の込んだ手抜き。
その「手抜き」にきっちりと意味があるのです。
同じシーンを同じメロディとフレーズに合わせて淡々と見せる。あえて見せ続ける。
そうすることでBメロの「溜め」をサビで開放する爽快感は何倍にも何倍にも威力をまして爆発します。


そういった全体の構成の上手さに、イラストの魅力とタイポグラフィのかっこ良さが合わさればほらこのとおり。

思わず「うぉっしゃああああああああ!!!」って叫びたくなるような爽快感と開放感が、めっちゃくちゃ楽しい。
どうですかこれ、ホント凄くないですか。

電子の歌姫は何を語るのか?

今まで述べてきたように、このPVは映像としても素晴らしいんですが、その裏にあるストーリーも色んな読み方が出来て面白いです。

その読み方を誘発するのはひとえに最後のこのカットの存在。
ルカが動画の中の少女がかけていた眼鏡を持って佇むこのシーン。これがあるから色々妄想出来ちゃうのですw


動画の中で、少女はミクの歌声に触れて、自分を縛る枷の象徴であった眼鏡を捨てて、青空に向かって叫びます。
心の開放、理屈じゃない感情の部分を解き放つ開放感が素晴らしい、というのは先程も述べたとおりです。
そして、心の叫びを歌にして開放する喜びを知った少女は、後に歌姫・巡音ルカとなった、という解釈ができます。
少女とルカが同じピンク髪の持ち主であること、眼鏡の存在、そして物語のトリガーとしての初音ミクの存在を考えると、そういう解釈も可能ですよね。
あるいは、ラストに映るルカは直接彼女とは関係なくて、歌に乗せてとある少女の物語を語ってみせた「神」のような存在なのかも。


一方で、「誰もが皆そんなふうに歩けるわけ無いよね」ってラストの歌詞を考えると、少女はこれからも色々なものに心を縛られて生きていくのかもしれません。
それは結局僕らも一緒で、どれだけ自然体でいたいと願っても、TPOによっては仮面かぶらないといけない場面も多々あるわけで。
誰もがやりたいように生きられるわけがないからこそ、心を開放する一瞬が尊いものになるんだよ、っていうメッセージだったりするのかもしれませんね。


そうやって見る側の思いや想像を刺激する力も、この動画が魅力的なものになってるひとつの要素だと思います。
まぁ、どれが正解かなんて作った人にしか分からないし、もしかしたら答えなんてないのかもしれませんけどね。
「誰も百点満点の答えなんて出せないんでしょう」
「いつだって最後はNo Logic」
だいたいそれでいいんじゃねーの。


色々と考えること、悩むこともありますけど、たまにはこういう動画に触れてみて、心を少し開放してみるのも一興じゃないでしょうか。

*1:乱暴に言うとミクがネギを振ってる的なアレ