音楽で今年を振り返ろう。―2010年ベストアルバム

今年ももうあとほんとにわずかですね。ハバネロです。
実家にて大掃除手伝ったり漫画読んだりしてるわけですが、そろそろ今年のことは今年のうちに振り返っておきたいところ。

ということで、私的2010年ベストアルバムを10枚選んでみました。
順位はかなり適当というか感覚です。トップ四つはどれも甲乙つけがたいですw

Keep The Beats!

Keep The Beats!

アニメ「Angel Beats!」から飛び出したガールズバンド「Girls Dead Monster」のフルアルバム。
劇中のライブシーンでも印象的に使われていた「Crow Song」「Thousand Enemies」をはじめとしたラインナップは、劇中歌集として、またガルデモというバンドのアルバムとして非常に素晴らしいものになっています。
しかし、このアルバムの最大の魅力は楽曲のクオリティの圧倒的な高さにあります。
ゼロ年代の邦楽ロック、とくにBUMP OF CHICKENRADWIMPSの流れを組むナイーブさとポジティブさが同居した歌詞。
LiSAのパワフルなボーカルと、それに負けないくらいにパワフルかつメロウなサウンド。
ゼロ年代の音楽、その延長線上にいるおそらくは唯一の“ガールズバンド”であり、「Angel Beats!」という作品そのものがゼロ年代邦楽ロックの文脈を土台としている*1ことを思うと、2010年とそこに続く10年代を一番象徴しているアルバムと言っても過言ではないでしょう。

  • くるり「言葉にならない、笑顔をみせてくれよ」

くるりのアルバムはどれもそれぞれのカラーがしっかりと定まっていて、その「色」がそれぞれとても魅力的に映ります。
このアルバムでは、そのカラーは「居心地の良さ」に振られているのではないでしょうか?
初期の頃の尖ったロックスピリットに加えて、「ワルツを踊れ」で見せた柔らかさ。そしてバラエティに飛んだ色合いを見せた「魂のゆくえ」からの流れを引き継いで、くるりがたどり着いたのはなんとも居心地のいいメロディと歌詞が紡ぎ出す世界でした。
そのどこか懐かしい、「古きよき時代の日本」を思わせる楽曲の数々が、聞いてるぼくたちに元気をくれます。
さわやかな空の下で聴きたいそんな一枚。
(個人的には京都音楽博覧会2010での、夕暮れの中の演奏がとても印象的でした)

おそらく今年一番ヒットしたアニメといえば「けいおん!!」。こちらも「Keep The Beats!」同様に劇中から飛び出したバンド「放課後ティータイム」のアルバム、という態をとっています。
特筆すべきはやはり二枚組となっているこのアルバムのディスクごとのコンセプトの違い。Disc1は「けいおん!!」劇中で演奏された曲を中心に据えた「第二期放課後ティータイムのベストアルバム」な構成。
これだけでももう死ぬほど贅沢な一枚なんですが、やはり白眉はなんといってもDisc2。
けいおん!!」第23話「放課後!」にて録音されたカセットテープを丸ごとCDに収録した、というかたちをとっています。*2
それによって、唯たち放課後ティータイムの過ごしたあの日の放課後を、楽曲を通して僕らが共有するという類を見ない体験を与えてくれる一枚になりました。
もちろんDisc1・Disc2通じて楽曲ひとつひとつのクオリティも折り紙つき。
放課後ティータイムというバンドのアルバム」としても「けいおん!!のファンアイテム」としても非常に素晴らしいものに仕上がってます。

マジックディスク【初回生産限定盤】

マジックディスク【初回生産限定盤】

ゼロ年代の邦楽ロックシーンを引っ張ってきたアジカンが、10年代に入ってさらに力を増したそんな印象を受ける一枚。
尖った初期衝動に加え、「ファンクラブ」を経て静けさを身につけ、「ワールドワールドワールド」で深みを増したアジカンの世界は、その色彩と力強さをどんどん強めて行っている気がします。
淡々としたメロディーと歌詞が特徴の「新世紀のラブソング」、ホーンの音が賑やかで楽しい「迷子犬と雨のビート」、切ない歌詞とメロディーがこころを打つ「ソラニン」。
これらのシングル楽曲に加えて、そのどれもが違った輝きと色を見せてくれる楽曲の数々。
さまざまな可能性を内包しながら次の10年代に向かうアジカンは、これからも色彩豊かな音楽の魔法を僕らにかけてくれるはず。

THERE’S NO TURNING BACK

THERE’S NO TURNING BACK

メンバー自らが公言しているとおり、60年代オールドロックの影響を深く受けたサウンドが特徴のBAWDIES
それが古臭いか?っていうとそういうことは全然なく、むしろめちゃくちゃカッコよく聞こえます。
加えて今回のアルバムは今まで以上にノリが良くて楽しくて仕方ないです。聞いてると知らないうちに身体が動き出しちゃうくらいに。
いま、一番「音楽って、ロックって楽しいね!」をストレートに分かりやすく伝えてくれる一枚だと思います。

  • 第六位:DECO*27「愛迷エレジー」

愛迷エレジー(DVD付)

愛迷エレジー(DVD付)

ニコニコ動画を発祥とするボーカロイドの文化は、今やネット上で広く受け入れられるものに成長しました。
ただ、そこにとどまらず、メジャーの音楽シーンに斬り込んでいこうという野心あふれるアルバムがこの一枚。
ボカロの「プロデューサー」からメジャーに移行した例としてはSupercellがすでに存在しているわけですが、DECO*27はその次を切り開く可能性を秘めていると思います。
今回のアルバムでは、Girls Dead Monsterのボーカルmarinaを歌い手に迎える、作詞に柴咲コウを持ってくるなど話題性も抜群。
もちろん、ニコニコ動画で大ヒットを記録した「モザイクロール」をはじめ、ポップなセンスと尖った感性が込められた楽曲群のクオリティは非常に高いです。
今後さらに拡大を続けていくだろうボカロ文化の未来を担うであろう一枚。

とげまる

とげまる

結成20年を超えてなお、スピッツの楽曲に込められた青春のみずみずしさは消えない、というちょっとした奇跡。
歌詞も、声も、メロディーも、すべてが全然年を取らないんですよ。いい意味で成長してないというか、非常に若々しい。
まだ「ビギナー」だなんて言えてしまう。
「花の写真」「若葉」なんて、そんな青春カラー丸出しの楽曲が書けちゃう。
まさに初心忘るるべからずを実践してる。
スピッツの若々しさ、みずみずしさ、ピュアな思いが未だ健在であり、そしてこれからも消えることはないだろう、って思える、それだけで非常に価値ある一枚だと思います。

  • 第八位:andymori「ファンファーレと熱狂」

ファンファーレと熱狂

ファンファーレと熱狂

まだまだ荒削りな印象だった1st「andymori」から、方向性を定め少しずつステップアップして生まれた、そんな一枚。
andymoriって、和風でも洋風でもなく、アジアンというかエスニックというか、そんなテイストを感じるバンドってだけでなかなかレアな存在だと思いますが。
それがとっつきにくいか、というとそんなことはなくて、「CITY LIGHTS」に代表される"跳ねるようなメロディーの楽しさ"は万人に届きうるパワーを秘めていると思いますし、「1984」のようにメロウな楽曲も一度聞いたらクセになる独特の雰囲気を持っています。
間違いなくその存在は唯一無二であり、邦楽ロックシーンの新たな可能性を切り開く可能性を秘めているバンド。
リズミカルなビートを刻み続けたドラム担当・後藤大樹の脱退もありましたが、それを乗り越えて新たなステージに到達してくれるはずです。

  • 第九位:世界の終わり「EARTH」

EARTH

EARTH

  • アーティスト: 世界の終わり
  • 出版社/メーカー: ラストラム・ミュージックエンタテインメント
  • 発売日: 2010/04/07
  • メディア: CD
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ゼロ年代BUMP OF CHICKENRADWIMPS系譜、その先にあるのが間違いなく彼ら。
柔らかくナイーブな歌声と、シンセやキーボードを多用するサウンドは時に優しく心地良く、時に脆く不安定なかたちでぼくらの胸に響きます。
「幻の命」のナイーブさと不安定さよりも、個人的には「インスタントラジオ」の楽しさをこれから育んでいってくれると尚いいかな、と思います。
ゼロ年代のティーン世代だったぼくらがバンプやラッドに救われたように、10年代のティーンを救い勇気づけるそんなバンドになってほしいなあ、と。
そういう意味で今後が非常に楽しみなバンドです。

  • 第十位:Miiraz「TOP OF THE FUCKIN' WORLD」

TOP OF THE FUCK’N WORLD

TOP OF THE FUCK’N WORLD

再版された"0th"アルバム「Be buried alive」の重苦しさと、2ndアルバム「Necessary Evil」のハイテンションな雰囲気が絶妙に混ざり合って生まれた傑作。世界なんて、自分なんてホントにもうクソッタレでファッキンなモンなんですが。ホントもう「ふぁっきゅー」ですよ。
それでもハッピーって叫びたいし、誰かに「ただいま、おかえり」みたいなそんなことを行ってもらえるだけで救われたりなんかしちゃうわけで。
そんな自分を取り巻く世界に対しての絶望と諦観と、でも捨てきれない希望、そんなものをロックのサウンドとラップの文法に乗せて叫ぶ一枚です。



  • 総括

今回選評をひとつひとつ書いててやはり思ったのは、2010年の音楽は、やはりゼロ年代」を基盤としてそこからどう発展していくか?というのがひとつのキーワードになるのかな?ということ。
その向かう先はやはりアーティストそれぞれによって違ったものになると思いますし、その「拡散」もひとつ今後のキーワードになっていくんじゃないかな?
いずれにせよ、ようやく始まったばかりの2010年代、その音楽シーンの今後が非常に楽しみです。

*1:楽曲のみならずキャラクターのネーミングにもそれが現れていて、ヒロインのひとり・仲村ゆりはGARNET CROWのボーカルが名前の由来。ほかにも日向・直井・野田といったキャラクターの名前にピンとくる人は多いんじゃないでしょうか。

*2:限定版にはさらにカセットテープそのものが付属するというこだわりっぷり。